近年、飲食店や小売店などの店舗で電子決済の導入が進んでいます。多くの消費者が決済手段として電子決済を選ぶようになった今、電子決済の導入は集客や売上アップに不可欠になりつつあるといえます。
とはいえ、電子決済を導入することで具体的にどのようなメリットを得られるのか気になりますよね。そこで今回は、電子決済を店舗で導入すべき理由や導入費用、電子決済代行サービスの選び方などを解説します。
電子決済とは?
電子決済とは、デジタルデータの送受で処理を行う決済方法のことです。硬貨や貨幣などの現金を用いる現金決済と対比して「キャッシュレス決済」と呼ばれることもあります。
電子決済の種類は多岐に及んでおり、SuicaやPASMOを代表とする「交通系」、nanacoやWAONなどの「流通系」、iDやQUICPayなどの「クレジットカード系」、PAYPAYやLINE Payを代表とする「QRコード決済系」の4つに大別されます。
これらの電子決済は、飲食店や小売店などの実店舗やECサイトなどで幅広く導入されており、消費者は好みの決済方法を選んで支払いをすることが可能です。
電子決済の普及は年々急速に拡大しており、国内の2021年における電子決済比率は「32.5%」となっています。
電子決済の比較一覧表
主な電子決済の種類と決済方法、代表例などを一覧表にまとめました。「電子決済にはどんな種類があるの?」と気になっている方は、参考にしてください。
電子決済 | 種類 | 決済方法 | 店舗数 |
---|---|---|---|
Suica | 交通系 | 前払い | 132万店舗(交通系電子マネー利用可能店舗数) |
PASMO | 交通系 | 前払い | |
nanaco | 流通系 | 前払い | 全国80万店舗以上 |
WAON | 流通系 | 前払い | 全国106万カ所 |
iD | クレジットカード系 | 前払い・後払い・即時引き落とし | 全国約175万台以上 |
QUICPay | クレジットカード系 | 後払い | 全国188万カ所以上 |
PayPay | QRコード決済系 | 前払い・後払い | 全国374万カ所 |
LINE Pay | QRコード決済系 | 前払い・後払い | PayPay加盟店で決済可 |
店舗で電子決済を導入すべき理由
電子決済を導入すべきか迷っている経営者の方は少なくないでしょう。ここでは、店舗での電子決済導入をおすすめする理由を3つ紹介します。
・売上アップを期待できる
・会計業務の時間と手間を軽減できる
・新たな客層を集客できる
売上アップを期待できる
電子決済を導入することで、売上アップが期待できます。さまざまな決済手段を用意しておけば、顧客が望む決済手段がないことによる機会損失を防止できるからです。
株式会社ジェーシービーが行った「キャッシュレス決済に関する調査」では、キャッシュレス決済が使えない場合、2人に1人が「来店意欲が減少する」と回答しています。決済手段は、消費者のお店選びに大きな影響を与えるようです。
電子決済を導入していない場合、「現金は持ち合わせていない」「キャンペーン中だから〇〇Payで支払いたい」などという見込み客を逃してしまうかもしれません。反対に、電子決済に対応することで、「〇〇Payが使えるなら」と購入に踏み切ってもらえることもあるでしょう。
会計業務の時間と手間を軽減できる
電子決済を導入すると、会計業務にかかる時間と手間を軽減できるというメリットも期待できます。
株式会社ジェーシービーが行った「決済速度に関する実験」では、キャッシュレス決済は現金決済よりも約16秒速いというデータが出ています。特に、スマホやカードを端末にかざすだけで決済できる「非接触型」の場合、現金決済よりも20秒も速く会計を済ませることができるそうです。
電子決済では現金の受け渡しがない分、お客さん一人あたりの会計時間を短縮できる他、現金の取り扱い量やお釣りの計算ミスが少なくなり、閉店後のレジ締め業務の効率化にもつながります。
新たな客層を集客できる
電子決済を導入することで、これまで「このお店は現金払いのみだから……」とお店を利用していなかった新たな顧客層を集客できるようになります。
また、電子決済サービス各社は、キャッシュバックやポイント還元など、独自のキャンペーンを定期的に実施しています。キャンペーン期間中、消費者は現金よりもお得な電子決済を使いたいと考えます。そこで、電子決済を導入しておけば、各電子決済サービスの利用者にお店を選んでもらいやすくなるでしょう。
電子決済を導入し、さまざまな決済手段に対応することは、より幅広い顧客に選んでもらうこと、ひいては集客力アップにもつながります。
電子決済の導入にかかる費用
導入メリットの多い電子決済ですが、デメリットとして考えられるのが導入に費用がかかることです。ここでは、電子決済の導入にかかる費用を具体的に解説します。
導入にかかる費用の内訳 | 費用相場 |
---|---|
初期費用 | 無料〜数万円 |
決済端末費用 | 無料〜10万円 |
決済手数料 | 3〜4% |
月額費用 | 無料〜数千円 |
初期費用
電子決済を導入すると、初期費用がかかります。ただし、電子決済代行サービス市場は近年競争が激化していることから、キャンペーンなどで無料になることも多くなっています。
決済端末費用
電子決済を導入するには、基本的に端末の設置が必要になります。決済端末の費用は、決済代行サービス会社や導入する端末の種類によって異なりますが、相場は無料〜10万円ほどです。
スマホやタブレットに接続するだけで利用できるような簡易な端末の場合、キャンペーンなどを利用することで無料または実質無料で利用できることがあります。
一方、クレジットカード決済や非接触決済、QRコード決済など、さまざまな決済手段に対応できるマルチ決済端末の場合、数万円の端末費用がかかることが多くなっています。決済端末の契約費用は、サービスによって異なるため、事前にしっかり比較検討しておくことが大切です。
決済手数料
電子決済を導入すると、顧客が電子決済をする度に決済手数料がランニングコストとしてかかります。決済手数料は、顧客ではなくお店側が支払わなければならないため、売上額によっては大きな負担になります。
具体的な決済手数料は、電子決済の種類や決済代行サービス会社によって前後しますが、相場は売上額の3〜4%ほどです。お店の規模や事業内容などによっても変わってくるため注意が必要です。
月額費用
電子決済を導入するにあたって、ランニングコストとしてかかるのは「決済手数料」のみで、月額費用は無料とするサービスが多くなっています。
初期費用と同様、月額費用も無料とするサービスやキャンペーンで無料になるケースなどが多く、利用する決済代行サービスによっては固定費ゼロも実現可能です。
電子決済代行サービスの選び方
続いて、電子決済代行サービスの選び方のポイントを解説します。「代行サービスがたくさんあって、どれを選べば良いかわからない」とお悩みの方は、参考にしてください。
・電子決済の種類
・決済端末
・各種費用
・入金サイクル
電子決済の種類
対応している電子決済の種類は、電子決済代行サービスや決済端末ごとに異なります。
基本的に、ほとんどの決済端末は、主要クレジットカード決済と電子マネー決済に対応しています。しかし、具体的にどの電子決済に対応しているか、QRコード決済や海外で広く普及している決済に対応しているかなどは、契約前にしっかり確認しておくことが大切です。
決済端末
決済端末の機能やスペックも、電子決済代行サービスを選ぶ上で確認しておきたいポイントです。
たとえば、決済だけでなく、レシート発行機能やPOSレジなどの機能が内蔵されている端末を選ぶと、一台でさまざまな作業を集約して行えるようになり便利です。
一般的に多機能であるほど費用も高くなりますが、長期で使用することを考えればコストパフォーマンスは悪くないでしょう。会計業務以外に効率化したい業務や店舗で利用しているPOSシステムとの相性などを考えながら、店舗に合った端末を提供しているサービスを選ぶと良いでしょう。
各種費用
電子決済代行サービスを選ぶ上で大切なのが、先ほど紹介した初期費用や端末費用などの各種費用です。
初期費用や決済端末費用、振込手数料など、決済手数料を除く各種費用に関しては無料・有料が会社ごとに異なります。お店の予算に合わせて、サービス内容と費用に納得できるサービスを選びましょう。
入金サイクル
電子決済代行サービスを利用する場合、店頭での決済から売上金が入金されるまでに時間がかかります。売上金が入金されるまでのサイクルは、決済代行会社ごとに異なるので、確認しておきましょう。
たとえば、決済からできるだけ早く売上金を手に入れたい場合は、入金サイクルが短いサービスを選ぶことをおすすめします。ただし、サービスによっては最低振込金額が儲けられていたり、金額が少ないと振込手数料がかかったりすることがあるため注意が必要です。
主な電子決済代行サービス
続いては、さまざまな種類の電子決済をまとめて導入できる主要な決済代行サービスを3社紹介します。
Square
Squareは、Square株式会社が提供する決済代行サービスです。
高機能な決済端末「Square リーダー」は、クレジットカードや電子マネーなどさまざまな決済手段に対応しています。決済端末をスマホやタブレットに接続するだけで、手軽に電子決済を導入することが可能です。
ICチップ付きクレジットカードやタッチ決済にも対応しているので、決済方法を問わずあっという間に会計が終わります。
月額固定費や振込手数料、解約料などの費用は一切かからず、決済ごとに発生する決済手数料のみの負担で利用できるのも魅力の一つとなっています。初期費用を抑えて電子決済を導入したい方におすすめです。
公式サイト
STORES 決済
STORES 決済は、STORES 株式会社が運営する決済代行サービスです。
クレジットカードと電子マネー、中国最大級のメッセージアプリ「WeChat」の決済サービス「WeChat Pay」に対応しています。電子マネーについては、業界最安水準の決済手数料「1.98%」で利用することができます。
申込みから最短3営業日で利用をスタートできることもSTORES 決済の魅力の一つです。急に店舗で電子決済の導入が必要になった際にも対応可能です。
公式サイト
SBペイメントサービス
SBペイメントサービスは、ソフトバンクの子会社であるSBペイメントサービス株式会社が提供する決済代行サービスです。
カード決済専用端末からQRコード決済専用APIなど、さまざまな決済サービスを用意しているため、さまざまな店舗ニーズに対応可能です。各種クレジットカードに加え、中国で広く普及しているUnionPayやAlipay、WeChat Payにも幅広く対応しているため、インバウンド集客に力を入れたい店舗にもおすすめです。
また、決済手数料は、クレジットカード決済で3.24%〜、電子マネー決済で2.90%〜、QRコード決済で2.00%〜と業界最低水準となっています。「一度にたくさんの電子決済を導入したい」という事業者様にピッタリなサービスです。
公式サイト
電子決済をお店で導入する際の注意点
最後に、電子決済をお店で導入する際の注意点を2つ紹介します。
・現金と電子決済の管理が必要
・電子決済が不向きなお店もある
現金と電子決済の管理が必要
電子決済を導入すると、現金の取り扱い量が減るため現金管理の手間を削減できるとお伝えしました。しかし、電子決済を導入するにあたって、新たに電子決済の管理が必要になる点には注意が必要です。
決済手段が増えたことによって、会計業務やレジ締めのオペレーションが複雑化してしまっては本末転倒です。現金と電子決済の管理の複雑化を防ぐには、複数の電子決済をまとめて管理できるマルチ決済端末を導入するなど、工夫が必要でしょう。
電子決済が不向きなお店もある
店舗にとって導入メリットが大きい電子決済ですが、中には電子決済の導入が不向きなお店も少なからず存在します。
電子決済は、比較的利用単価が低く、数百円〜数千円の少額決済でよく使われる傾向にあります。そのため、一度の会計額が10,000円を超えるなど、客単価が高いお店の場合、電子決済を導入しても利用があまり進まない可能性があります。
また、現金払いの客層がメインのお店の場合も同様に、電子決済の導入効果は薄れてしまうかもしれません。初期費用や月額固定費などを支払ってまで導入する価値があるかどうか、しっかり検討することが大切です。
まとめ
電子決済を店舗で導入すべき理由や導入費用、電子決済代行サービスの選び方などを解説しました。
決済手段が多様化し、電子決済の利用が年々拡大する今の時代において、電子決済の導入は集客や売上アップに役立ちます。導入にあたっては、決済手数料などの費用がかかるものの、顧客の取りこぼしや機会損失を防げることを考慮すれば、導入メリットの方が大きいといえます。
ぜひこれを機に、電子決済の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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