アプリの維持費

飲食店の集客方法は、かつては「チラシを配る」「ポイントカードでお得感を出しリピーターを増やす」といったように、アナログなものが多く行われていました。デジタルを活用した集客方法を考えた際、スマートフォン(スマホ)を活用しない手はありません。

「令和3年版 情報通信白書」によると、スマートフォンはいまや8割以上の世帯が保有している計算になるそうです。特に、ネットを利用して飲食店を探すターゲット層であれば、間違いなくスマートフォンを所持していると考えて良いでしょう。

今回は、SNS(InstagramやTwitter)やアプリなど、スマートフォンを活用した集客方法やその維持費について解説します。

スマホで集客を行う方法の種類

さて、スマホを利用して集客する方法はいくつもあります。ここでは、主な3つの方法を紹介します。

お店のアプリを開発する

一つ目が、お店専用のアプリを開発する方法です。AppStoreやGoogle Play Storeに公開するスマートフォン向けアプリを開発することで、独自の機能を自由に開発できます。

単体のアプリとして動作するため、スマートフォンのメニューにお店のアイコンが表示されますし、クーポンや情報発信だけでなく、ミニゲームをつけることも可能です。

このように、非常に自由度の高いことがメリットとして挙げられますが、そのぶん開発には相応の費用や時間が必要です。

InstagramやTwitterなどのSNSを活用する

二つ目は、InstagramやTwitterをはじめとしたSNSを活用する方法です。お店で使用するスマートフォンや、店員のスマホにアプリをインストールするだけで利用できるため、手軽に情報を発信できる反面、写真をメインとした投稿しかできません。

日頃から個人で利用しているSNSと同様に運用するだけでも集客効果が望めますが、SNSごとにルールが設定されているため、独自のプロモーションを実施したい場合には制限が発生する可能性があります。

非常に手軽に利用できることはメリットでありますが、独自のプロモーションには向かないため、自由度は低いといえます。

LINE(ライン)

3つ目の方法は、コミュニケーションツールである「LINE」を活用する方法です。お店のアカウントを作成して友達登録してもらう「LINE公式アカウント」と、LINEの中で利用できる簡易的なアプリを開発する「LINEミニアプリ」があります。

利用者がLINEを利用している必要がありますが、普段利用しているコミュニケーションツールを通して情報発信ができるという点はメリットだといえるでしょう。

3つの方法を比較

これら3つの集客方法を比較してみましょう。LINEについては、公式アカウントとミニアプリを分けて表記しています。

スマホで集客を狙う方法手軽さ費用自由度
お店のアプリ
Instagram、TwitterなどのSNS
LINE(公式アカウント)

ここからは、一番費用がかかる「お店のアプリ」をベースに、アプリを維持するための費用を計算していきます。

お店のアプリを作るために必要な費用

まず、お店の専用スマホアプリを開発して集客する方法について解説します。専用のスマホアプリを開発することになるため手軽ではありませんが、オリジナルの機能をふんだんに盛り込むことが可能です。


そのため、自由度は最も高いといえます。とはいえ、気になるのは費用面でしょう。大きく分けて「開発費」と「維持費」2つの費用がかかると思ってください。

開発費

最初にかかるのは、アプリそのものを開発する費用です。

  • ・アプリ制作費用(アプリの機能を開発する費用)
  • ・デザイン費用(店オリジナルのデザインを作る費用)
  • ・UIカスタマイズ費用(画面のテンプレートから店向けに変更する費用)

基本的に、店舗アプリのベースになるようなアプリを流用するか、一から作るかによって費用は異なります。開発したいアプリの内容に応じて、10万円〜200万円程度の開発費用が必要になることが一般的です。

自由度の高いオリジナルアプリであれば、それだけ開発費用も高くなると考えましょう。

維持費

アプリは、「開発して終わり」ではありません。運用するために必要な「維持費」がかかります。

この維持費の内訳は多岐にわたりますので、次の項目で詳細を説明します。

アプリの維持費とその内訳

お店のオリジナルアプリを開発した場合、どの程度維持費がかかるのでしょうか?ここでは、どのような作業が必要で、どの程度費用が必要なのかについて解説していきます。

お知らせなどの情報発信

アプリを作ってお客様にインストールしてもらう場合、定期的な情報発信やアプリ利用者だけが少し得をするような「特別感」が必要になります。集客するためには、定期的・長期的な情報発信が必要になりますので、その分の手間(=人件費)がかかります。

情報発信には技術的な知識は必要ありませんので、オーナーやアルバイトの方が適宜発信できるようにすると良いでしょう。

サーバーやドメインの維持費

アプリ内のデータを管理・保管するために、レンタルサーバーの契約が必要です。そのためには、月額数千円〜数万円かかります。

また、店舗専用のドメイン(「XXX.com」など、インターネット上の住所のようなもの)が必要になります。こちらは、年間500円〜5万円程度の費用がかかります。加えて、SSL証明書というデータ暗号化のために必要な証明書があり、年間1〜10万円程度かかります。

なお、店舗ホームページがすでに存在する場合には、その費用と共用できる可能性があります。

Apple/Googleの維持

お客様にスマホアプリをダウンロードしてもらうためには、Apple(iOS向け)やGoogle(Android向け)にアプリを登録する必要があります。

2022年現在、日本ではこの2つのOSのスマホ利用率がほぼ半々となっているため、どちらか片方に絞ることは難しいため、iOSとAndroid両方のアプリをリリースした方が良いでしょう。

また、アプリをリリースするにはAppleとGoogleと契約する必要がありますが、維持するのにも費用がかかります。特に、Appleの場合は「Apple Developer Program」の年間メンバーシップに加入する必要があり、年間費用が料金99ドルかかります。

一方で、Google Playは登録費用として25ドルかかるだけです。一度払ってしまえば、それ以降の費用は発生しません。

OSのバージョンアップに伴う保守

iOSもAndroidも、定期的にOSがバージョンアップされます。OSのバージョンアップに伴い機能が変わることもありますが、場合によってはアプリが動かなくなることもあります。そのため、新しいOSバージョンが公開されるたびにアプリが動くか確認する必要があります。

OSバージョンアップの内容によってはアプリの修正が必要になるため、基本的には開発元と保守契約を結ぶことになります。保守契約を結ぶ場合、最低でも毎月あたり10万円程度かかると考えましょう。

機能追加やバグ修正

店舗の形態や扱う商品などが変わった場合、アプリの機能を追加しないと対応できないケースがあります。その場合には、機能を追加するために追加でアプリを改修する必要があります。

また、アプリにバグ(不具合)が発生した場合は修正しなければなりません。特に、バグによりアプリが動作しないとなると、ユーザー体験が悪化するだけでなく、お店に対する信用も低下する可能性があります。

店舗と異なる場所で発生した問題であっても、ユーザーは深刻に捉えることがあるため注意しましょう。単純なバグであれば、修正は開発元の保守契約の中でサポートされることもありますが、機能追加は別途費用がかかります。

改修する規模によっては、開発時と同等の費用がかかる可能性があるため注意が必要です。「この程度の修正なのに」と思っても、改修に時間と費用を要する場合もあります。開発者に見積を依頼したところ、想定よりも非常に高い見積を受け取ることもあるため注意してください。

アプリを維持するための費用目安

これまで解説したアプリの維持費をまとめると、下の表のようになります。レンタルサーバーやドメインなどは振れ幅がありますが、安く見積もっても年間で150万円程度はかかる計算になります。

お店アプリの維持費年間費用
お知らせなどの情報発信人件費のみ ※お店のメンバーで担当することになります
レンタルサーバー10万~100万円程度 ※アプリにアクセスする人数規模により変動
ドメイン(XXX.comなど)500円~5万円程度 ※ドメインの種類によって変動
SSL証明書1~10万円程度 ※セキュリティサポートによって変動
Apple Developer Program99ドル
Google Play登録費用25ドル ※初回のみ
保守費用(バグ修正、OSアップデート)年間120万円程度
機能追加別途見積もりが必要

アプリの維持費を抑えるには?

アプリを開発しても、維持するための費用が思いのほか高いことがおわかりいただけたでしょう。それでは、維持費を抑えるにはどうしたら良いでしょうか?

固定費は安くならない

大前提として、レンタルサーバーの費用やアプリ登録費用などの「固定費」は、削ることは難しいです。

レンタルサーバーは、最安だと年間で1万円以内の場合もあります。しかしながら、値段が安いのには理由があります。

たとえば、テレビで紹介された際に、公式サイトにアクセスできなくなるようなことを体験したことはないでしょうか?アプリの利用者数が増えた際に、サーバーがパンクして利用できなくなる可能性があるということです。

そのようなことを回避するためには、高いレンタルサーバーを契約することで多くの利用者に対応できますが、そのぶん費用がかかります。安いサーバーには意味があるのです。

選定時には、どの程度利用されるかを想定し、それに見合ったサーバーをレンタルする必要があることを覚えておきましょう。

必要な機能を絞る

開発時点で必要な機能を絞ることで、維持費用を安くできる可能性があります。

アプリを開発するとなると、「あれもやりたい」「これもやりたい」と考えてしまい、アプリの機能が非常に多くなることも多いでしょう。機能が多くなるほどアプリの開発費は高くなり、それに伴い維持費も高くなります。そのため、本当に必要な機能だけに絞ることで、必要最低限の費用に抑えることができます。

他の方法も検討する

InstagramやTwitterなどのSNSやLINEで集客する場合、店専用アプリとは異なり、既存のアプリを利用するため、費用はほとんどかかりません。しかし、この場合、他店との違いを出しにくく、お客様に注目してもらうための工夫、つまり広報のための人件費が余計にかかります。

また、LINEは無料で通知できる件数に限りがあり、お客様の数によっては費用がかさむ可能性があります。

SNSの手軽さと、カスタマイズの両立をしたければ、LINEのミニアプリ制作、運用や配信代行などができるサービスもあります。たとえば、当社ディップ株式会社が提供している「常連コボット for LINE」は、初期費用を3万円、運用費用を月額2~4万円ほどに抑えることができます。そのため、専用のアプリを開発したり、運用したりするよりも費用を抑えることができます。

そのため、「費用は抑えたいけれど、SNSでの運用は難しい」とお考えの場合は導入を検討してみてください。

まとめ

店舗専用アプリを開発して集客したいと考えていらっしゃる方は「アプリの開発費用・運用費用はこんなにかかるのか」と驚いたかもしれません。費用を抑えることと自由度を高くすることはトレードオフですので、店舗の独自色を強く出したい場合は、譲れないポイントを事前に考えておくと良いでしょう。