ポイントカードのカードレス

ポイントカードアプリとは、紙やプラスチックのポイントカードを、スマートフォン上でも同じように利用や管理ができるアプリです。ポイントカードアプリを利用することで、アナログのポイントカードでは行えなかったさまざまなメリットを享受できます。

今回は、ポイントカードアプリの仕組みからメリット、作り方などを解説していきます。ぜひ自社でポイントカードアプリを発行する際の参考にしてみてください。

ポイントカードはカードレスの時代へ

従来、紙で運用していたポイントカードを、スマートフォンのアプリを利用して管理していく手法が広がっています。背景には国民の多くがスマートフォンを利用するようになったことや、業務のデジタル化やDXの推進などが挙げられます。

NTTドコモのモバイル社会研究所の調査によると、2022年現在、スマートフォン/ガラパコスケータイの所有者のうち、スマートフォンを利用している人の割合が94%になっています。スマートフォンの利用が当たり前になり、また利用率の増加に伴い、スマートフォンでアプリを利用することに抵抗がなくなってきているといえます。

加えて、業務のデジタル化やDXの推進が進んでいます。昨今、どの業界のどのような仕事でもデータを活用して効率的に仕事を行い、生産性向上を図ることが求められています。そのため、ポイントカードを使うアプリによって、利用者データを取得し、自社の成長につなげようと考える企業が増えてきました。

このように、利用者がスマートフォンでアプリを利用することが当たり前になったこと、業務のデジタル化やDXの推進が合わさったことにより、ポイントカードアプリが広がり、カードレスの時代へと突入し始めています。

ポイントカードアプリの仕組み

ポイントカードは、買い物などを通じて店舗や企業が定めたポイントを顧客に付与していくものです。ポイントを貯めることで、日々の買い物を促したり、ポイントを利用して商品をお得に購入したりすることができます。

ポイントカードアプリでは、これまで紙のポイントカードで行っていたポイントの付与や利用はもちろんのこと、お得な情報を提供できるようになるなど利便性が高まりました。

加えて、企業側はポイントカードアプリを利用することで、自社の顧客管理システムなどと連携させ、販売展開をより効率的に行うことが可能です。たとえば、ターゲットを絞ったお得なクーポンの配布などがあります。ポイントカードアプリによって、顧客情報がデジタル化されたことによって、企業側も恩恵を受けています。

ポイントカードをスマホで管理するアプリとは

ポイントカードをスマホで管理するアプリには、主に次の2種類が挙げられます。それぞれについて解説していきましょう。

  • ブランド特化型アプリ
  • 複数店舗一括管理型アプリ

ブランド特化型アプリ

ブランド特化型アプリとは、その名のとおり自社ブランドに特化したアプリです。ブランド特化のため、基本的には発行元のポイントカードアプリしか利用ができません。

ブランド特化型のアプリとして有名なものには、Tポイントやdポイントクラブ、楽天ポイントカードなどがあります。それぞれ、自社ブランドのポイントカードアプリを、提携している店舗などで利用できるようになっています。

TポイントであればTSUTAYAやファミリーマート、dポイントクラブはマクドナルドやジュンク堂書店、楽天ポイントカードであれば、ミスタードーナツやビックカメラなどです。自社のポイントカードアプリがさまざまな場所で利用できるため、利用が促進されます。

複数店舗一括管理型アプリ

複数店舗一括管理型アプリは、複数のポイントカードを一括で管理できるアプリです。ブランド特化型アプリが、自社ブランドのみの管理しかできないのに対して、さまざまなポイントカードを一括で管理できることが特徴です。

たとえば、Google PayはTポイントやdポイントクラブ、楽天ポイントカード、Ponta、東急ハンズ、スターバックスなどで利用ができます。それぞれに特化したアプリを一括でまとめられるため、ポイント取得を行うためにアプリをそれぞれ立ち上げる必要がなくなります。

他にも、LINEマイカードやスマホサイフなど、複数店舗で活用できるポイントカードを管理できるアプリがあります。

ポイントカードアプリを導入するメリット

ポイントカードアプリを導入するメリットは、主に次の3点が挙げられます。それぞれのメリットについて解説していきましょう。

  • 顧客情報をデータ化できる
  • 顧客の利便性向上につながる
  • コストの抑制につながる

顧客情報をデータ化できる

ポイントカードアプリを通じて顧客情報をデータ化できることは、経営戦略を練るうえで非常に役立ちます。なぜなら、顧客情報をデータ化することで、どの年代の性別の人が、いつ、どのような商品を、いくつ買ったのかなどがわかるからです。来店回数なども自動でシステム上に反映されるため、優良顧客かどうかなども簡単に見分けることが可能です。

こうした顧客情報のデータ化は、紙のポイントカードでは行えません。

データをきちんと分析できれば、効果的な施策やキャンペーンを打つことができ、店舗へのさらなる集客アップが見込めます。たとえば、期間限定のポイントアップキャンペーンや特定の条件を満たした顧客に対してのクーポン券の配布などです。

また、こうした施策やキャンペーンやクーポン券の配布が効果的であったかどうかも、アプリを通して分析できます。クーポン券を配布したけれど利用促進につながらなかったのであれば、ターゲットは合っていたのか、クーポンの対象となった商品やサービスは適切だったかなどを考え、次に活かすことが可能です。

顧客情報をデータ化することで、主観的ではない客観的なデータに基づいて施策を打つことにつながります。

顧客の利便性向上につながる

ポイントカードアプリは、顧客の利便性向上にもつながります。なぜなら、ポイントカードアプリはスマートフォンの他のアプリと同様に利用ができるため、利用するハードルが低いからです。

スマートフォンの中のアプリの一つとして利用できるので、買い物時にポイントカードを忘れてしまったなどの機会損失は発生しません。また、紙のポイントカードを利用している場合、複数のポイントカードを持っているため、財布がかさばって不便になってしまうこともあります。財布がかさばってしまうと、レジでポイントカードを出すのが億劫になり、提示せず購入を終えてしまう可能性もあります。

また、顧客の中には、貯めたポイントを利用せずに終わってしまう人もいます。そのような人に向けて、アプリ上で通知をすることで来店を促すことにもつながります。

たとえポイントカードアプリに貯まったポイントが利用されなくても、店舗や企業には期限切れのポイントが引当金として利益に還元されます。それでも長期的な視点に立てば、顧客に何度も利用してもらう方が利益につながるため、ポイントカードアプリを活用するのが良いでしょう。

コストの抑制につながる

ポイントカードアプリは、開発やシステム連携など、初期に大きなコストがかかります。しかし、ランニングコストは紙のポイントカードを運用するよりも安く抑えられます。なぜなら、紙のポイントカードの場合、印刷代や発行代などが発行枚数に応じてかかってきてしまうからです。

他にも、アプリを通じてクーポンの発行などを行えば、紙のクーポンを発行する費用を抑制することにもつながります。長期的なポイントカード運用を考えた場合、ポイントカードアプリを開発し、運用を行った方がコスト抑制になる可能性があります。

ポイントカードアプリの作り方

ポイントカードアプリの作り方には、主に次の3種類があります。

  • スクラッチ開発を行う
  • アプリ開発会社に依頼する
  • ポイントカードサービスを利用する

それぞれの作り方について解説していきます。ぜひ、自社のポイントカードアプリを作る際に、どの方法が適しているかを考えてみてください。

スクラッチ開発を行う

スクラッチ開発とは、システムの基となるパッケージなどを利用せずに、一からオリジナルアプリを開発する手法です。一からの開発になるため、開発工数やコストは高くなってしまいますが、そのぶん自社で行いたいことや要望をすべて実現できるメリットがあります。

パッケージ開発の場合、システム上どうしてもカスタマイズができない、機能が足りないなどのケースがあります。こうしたデメリットがスクラッチ開発の場合はありません。

また、スクラッチ開発のメリットは、長期間利用が可能という点です。システム開発企業が倒産したりサポートが終了してしまったりしても、自社が運用を行えれば継続して利用が可能です。そのため、自社にシステム開発部門などがある企業は、メンテナンスや迅速なシステム改修なども可能です。

一過性ではなく、ポイントカードアプリを長期間利用したい企業におすすめです。また、予算を豊富に取れる企業や開発人員のリソースが割ける企業などもスクラッチ開発に適しています。

反対に、すぐにポイントカードアプリを導入したい企業や、開発コストをそこまでかけられない企業などは他の方法がおすすめです。

アプリ開発会社に依頼する

アプリ開発会社に依頼するのも一つの方法です。

アプリ開発会社に依頼する最大のメリットは、プロによるレベルの高いアプリが完成できるという点です。ポイントカードアプリを開発したとしても、デザイン性に優れてなかったり、利便性が低かったりすると普及しません。アプリ開発会社に依頼を行えば、こうしたデメリットは解消されます。

アプリ開発会社に依頼をする場合には、自社の要望をきちんと整え、利用したい機能なども明確にしたうえで依頼をするとスムーズに進んでいきます。また、予算などの都合により機能を制限しなければならない場合には、優先度をつけておくことも重要です。

他にも、アプリ開発会社の中には、パッケージ型アプリ開発を得意としている会社もあります。

パッケージ型とは、すでにある程度の仕様やテンプレートが決まっているものです。そのため、スクラッチ開発よりも、手軽にポイントカードアプリを開発することができ、コストが抑えられることも魅力的です。

ポイントカードアプリ開発に利用するパッケージには、ポイント管理はもちろん、クーポンの配信やお知らせ機能など、さまざまな機能が標準で備わっているものが多いです。そのため、アプリ開発の効率化にもつながります。備わっている機能については、パッケージによって違いがあるため、きちんと確認しておくべきです。

ポイントカードサービスを利用する

ポイントカードサービスとは、「ショップカード」などの店舗向けのポイントカードサービスを利用する方法です。

最大のメリットは、前述した2つの方法と比較して手軽に開発ができ、コストも抑えられる点です。最小限の機能に押さえての開発になるため、手間や工数がかからないのが嬉しい点です。すぐにでもポイントカードアプリを運用したいと考えている企業や店舗に向いています。

ポイントカードアプリの注意点

最後に、ポイントカードアプリを開発・運営するうえでの注意点をお伝えしましょう。主に、次の2点には注意が必要です。

  • 顧客にとって価値のあるものにする
  • 費用対効果を考え、採算に見合ったものにする

顧客にとって価値のあるものにする

ポイントカードアプリは、「ロイヤルティ・プログラム」というマーケティング戦略の一つです。

ロイヤルティ・プログラムとは顧客に対して、企業が購入などに応じて特典を与えることです。ポイントカードは、購入金額や来店回数に応じて買い物で利用できるため、ロイヤルティ・プログラムの代表例とされています。

アメリカの市場測定会社の調査によると、条件が同等の小売業者がいた場合、ロイヤルティ・プログラムがある小売業者を選択すると回答した人の割合は72%にも上りました。こうした点からも、ポイントカードアプリを顧客にとって価値のあるものにすれば、リピーターの獲得などにつながります。

また、顧客にポイントカードアプリの価値を感じてもらえなければ、利用してもらうことはできません。そのため、新規顧客を獲得する仕組みを作ることも大切です。アプリの新規ダウンロード特典などはもちろん、魅力的なアプリを作ることで、既存ユーザーから紹介してもらえるようなアプリを作ることも大切です。

昨今、口コミの影響力は非常に大きくなっています。SNSを利用して口コミがシェアされれば、多くの顧客に拡散することにもつながります。ポイントカードアプリは作ることが目的ではなく、利用してもらうことが目的です。顧客にとって価値のあるポイントカードアプリとなっているかを考えながら、開発や運営を行うことが重要です。

費用対効果を考え、採算に見合ったものにする

ポイントカードアプリの開発は、スクラッチ開発やパッケージ開発、ポイントカードサービスの利用などさまざまな方法があります。それぞれの開発は、費用も大きく異なります。そのため、開発前に費用対効果を綿密に計算することが大切です。採算に見合った開発にならなくなる可能性があるからです。

また、ポイントカードアプリの利用率を上げるために、ポイントの還元率を上げる施策があります。利益率が低い商品の販売等を行っている場合、高い還元率は自社の費用対効果に合わない場合があります。そのため、自社商品の売上価格と顧客が購入する単価を考慮したうえで還元率を設定すべきです。

まとめ

ポイントカードアプリを活用することは、顧客にとっても企業にとっても多くのメリットがあります。また、今後はさらにスマートフォンの利用が広まっていくと考えられるため、ポイントカードアプリの利用は、ますます促進されていくことが予想されます。

しかし、ポイントカードアプリは顧客に価値を感じてもらうことで、初めて成功したといえます。長期的に顧客に利用してもらうためにも、利便性や操作性、デザイン性など、顧客に寄り添ったアプリが求められます。顧客のニーズを的確に掴み、自社にとって価値のあるアプリを開発することが大切です。