補助金とは、国や地方公共団体などから返済不要な資金を受け取ることができる制度です。
補助金をうまく活用することで事業への投資がしやすくなり、お店の発展に役立てることが可能となるでしょう。
では、飲食店で活用できる補助金には、どのようなものがあるのでしょうか?今回は、飲食店で活用できる補助金のうち、2022年度に存在するものを紹介するとともに、補助金を活用する際の注意点についても解説します。
補助金とは
補助金とは、国や地方公共団体などから、返済不要なまとまった資金を受け取ることができる制度です。
補助金は永続的な制度ではなく、その年度の予算や政策に応じて設けられます。そのため、今年度には存在する補助金が翌年度にはなくなってしまう可能性や、内容が大幅に変更される可能性が低くありません。
こうしたことから、自社で活用したい補助金を見つけたら「来年申請しよう」などとは考えず、制度のあるうちに申請しておくと良いでしょう。
なお、補助金は要件を満たして申請をしたからといって、必ずしも受給できるものではありません。申請後、多数の応募の中から採択がされて、ようやく受給資格を得ることができます。
助成金との違い
補助金と似たものに、「助成金」が存在します。補助金と助成金は、国などから「返済不要な資金を受け取れるもの」という点で共通しています。
実は、補助金と助成金との間に明確な線引きがあるわけではありません。しかし、一般的には、次のように整理できるものが多いでしょう。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
管轄 | 経済産業省などさまざま | 厚生労働省 |
目的 | 補助金ごとにさまざま | 雇用や人材育成が多い |
要件を満たせば必ず受給できるか | 要件を満たしたうえで採択される必要がある | 要件を満たせば受給できる |
募集期間 | 一定の公募期間のみ | 通年 |
ただし、この分類では「補助金」とされるようなものの名称が「助成金」となっているものや、その反対のものも存在します。そのため、こちらはあくまでも参考としていただき、実際に申請を検討する際には公募要領などをよく確認すると良いでしょう。
融資との違い
まとまった額の資金調達をする方法として、補助金とよく比較されるものに、融資があります。
融資と補助金との最大の違いは、返済の必要性の有無です。補助金は不正受給などをしない限り、原則として返還は必要ありません。一方、融資は必ず返済が必要となります。
ただし、まとまった額の補助金を受け取ることは容易ではありません。そのため、基本的には融資で資金調達をするものと考え、仮に補助金が受給できたらその補助金で融資を早期に返済するものと考えておくと良いでしょう。
飲食店が利用できる補助金①:事業再構築補助金
ここからは、飲食店が利用できる主な補助金を3つ紹介します。1つ目は、事業再構築補助金です。
事業再構築補助金は大型の補助金であり、受給の難易度も低くありません。しかし、コロナ禍で業績の落ち込んだ飲食店が事業の再構築をはかる際に受給できれば、新たな事業展開がしやすくなるでしょう。
事業再構築補助金の概要は、次のとおりです。
概要
事業再構築補助金は、新型コロナ禍で誕生した、比較的新しい大型の補助金です。コロナ禍で業績が落ち込んだ事業者が、思い切った事業の再構築をはかるにあたって必要となる経費を補助してもらえます。
事業再構築補助金を申請するための主な要件は、次の3点です。
1. 新型コロナ禍で業績が落ち込んだこと
2. 事業の再構築をはかること
3. 認定経営革新等支援機関とともに事業計画を策定すること
たとえば、コロナ禍で業績が大きく落ち込んだ居酒屋が、新たにテイクアウトの弁当屋を始める場合やキッチンカーの運営を始める場合、キャンプ場運営などまったく別業態に乗り出す場合などに、活用できる可能性があるでしょう。
一方、事業の再構築が必要となるため、単に既存店舗と同じ事業を営む2店舗目を出店したい場合などには、利用することができません。
補助金額と補助率
事業再構築補助金には、通常枠のほか、「大規模賃金引上枠」や「回復・再生応援枠」など5つの特別枠が設けられています。このうち、もっとも多くの事業者が申請する通常枠の補助金額は、雇用する従業員の数に応じて、それぞれ次のとおりです。
・20人以下:100万円~2,000 万円
・21~50 人:100 万円~4,000 万円
・51~100人:100万円~6,000 万円
・101人以上:100 万円~8,000万円
また、補助率は次のとおりです。
・中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2)
・中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3)
20人以下で運営する比較的小規模な飲食店であっても、最大2,000万円の補助金を受け取れる可能性があります。
補助対象となる経費
事業再構築補助金で補助対象となる経費には、次のものなどがあります。
・建物費(建物の新築は必要性が認められた場合に限る)
・機械装置・システム構築費
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・外注費
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝・販売促進費
・研修費(補助対象経費総額の3分の1まで)
補助対象となる経費は、このように非常に幅広くなっています。また、建物費が対象とされている点で、非常に珍しい補助金です。事業の再構築に必要となる経費が広くカバーされているといえるでしょう。
最新のスケジュール
事業再構築補助金は執筆時点である2022年10月末現在、次のとおり第8回公募が開始されています。
- 公募開始:2022年10月3日(月)
- 応募締切:2023年1月13日(金)18:00
申請を希望する場合には、早めに専門家へ相談するなど準備を進めると良いでしょう。
飲食店が利用できる補助金②:IT導入補助金
IT導入補助金は、飲食店でぜひ活用を検討したい補助金の一つです。概要について解説していきましょう。
概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上アップをサポートする事を目的とした補助金です。お店のIT化を図りたい場合には、ぜひ活用を検討すると良いでしょう。
補助金額と補助率
IT導入補助金には、通常枠のほか、セキュリティ対策推進枠やデジタル化基盤導入類型などが存在します。このうち、通常枠(A類型)の補助金額は30万から150万円、補助率は1/2です。
また、レジの導入などにも使えるデジタル化基盤導入類型では、補助金額が5万円から350万円、補助率は3/4(補助額のうち50万円超の部分は2/3)とされています。他に、レジや券売機などの導入に最大20万円(補助率1/2)の枠が設けられています。
補助対象となる経費
IT導入補助金の補助対象経費は、通常枠で次のとおりです。
・ソフトウェア費
・クラウド利用料(1年分)
・導入関連費
また、デジタル化基盤導入類型では、次のものが補助対象となります。
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用費(最大2年分)
- 導入関連費
- PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
- レジ・券売機等
最新のスケジュール
IT導入補助金の最新公募スケジュール(最終締切日)は、次のとおりです。
- 通常枠(A・B類型):2022年12月22日(木)17:00(予定)
- セキュリティ対策推進枠:2023年2月16日(木)17:00(予定)
- デジタル化基盤導入類型:2023年1月19日(木)17:00(予定)
申請をする枠によって締切日が異なるため注意しましょう。
飲食店が利用できる補助金③:小規模事業者持続化補助金
3つ目に紹介するのは、小規模事業者持続化補助金です。こちらは補助金額こそ多額ではないものの、非常に使い勝手の良い補助金です。そのため、これまで補助金を使ったことがないという飲食店様も申請してみると良いでしょう。
概要
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、その取り組みと併せて行う業務効率化の取り組みを支援する補助金です。お店をPRするチラシの配布やウェブサイトの構築などに幅広く活用でき、非常に使い勝手の良い補助金であるといえるでしょう。
補助金額と補助率
小規模事業者持続化補助金には、通常枠のほか、5つの特別枠が設けられています。それぞれの補助金額は、次のとおりです。
・通常枠:50万円
・賃金引上げ枠、卒業枠、 後継者支援枠、創業枠:200万円
・インボイス枠:100万円
また、補助率は原則として2/3ですが、賃金引上げ枠のうち赤字事業者のみは3/4へと引き上げられています。
補助対象となる経費
小規模事業者持続化補助金の補助対象経費は、次のとおりです。
・機械装置等費
・広報費
・ウェブサイト関連費
・展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
・旅費
・開発費
・資料購入費
・雑役務費
・借料
・設備処分費
・委託・外注費
ただし、ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4が上限とされています。
最新のスケジュール
小規模事業者持続化補助金の最新スケジュールは、次のとおりです。
- 第10回受付締切:2022年12月9日(事業支援計画書発行の受付締切は2022年12月2日)
- 第11回受付締切:2023年2月下旬(事業支援計画書発行の受付締切は2023年2月中旬)
飲食店が補助金を活用する際の注意点
飲食店が補助金を活用しようとする場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?主な注意点は次のとおりです。
・申請には期限がある
・受給するためには採択される必要がある
・補助金は原則として後払いである
・悪質な代行業者に注意する
申請には期限がある
補助金は、いつでも申請できるわけではありません。申請できる期間は補助金によって異なりますが、おおむね1ヶ月から2ヶ月程度の公募期間を設けていることが一般的です。
そのため、申請したい補助金を見つけたら、公式ホームページを定期的にチェックするなどして、公募開始を見落とさないようにしましょう。また、あらかじめ補助金申請を代行してくれる事業者へ相談しておくことで、公募開始を教えてもらえる可能性もあります。
受給するためには採択される必要がある
補助金は、要件を満たして申請したからといって必ず受給できるものではありません。補助金を受け取るためには、多数の申請の中から採択されることが必要です。
そのため、補助金ありきで事業計画を立ててしまえば、万が一不採択となった際に立ち行かなくなる可能性があります。補助金はあくまでも補助的なものであると考え、特に大型の補助金を申請する際には、併せて融資を申し込むなど、他の資金調達方法も検討しておきましょう。
補助金は原則として後払いである
補助金は、採択がされたからといってすぐに受け取れるものではありません。
採択後、まず補助対象として申請をした事業(対象とする経費の支出など)を実施することが必要です。その後、領収書などの証拠書類とともに事業の実施報告をして、ようやく補助金を受け取ることができます。
つまり、補助対象とした経費を支出する時点では、まだ補助金は手元に無いということです。そのため、特に大型の補助金では、事業を実施するための資金を別途用意しなければなりません。
一般的には、金融機関から「つなぎ融資」として、一時的な借り入れをすることが多いでしょう。
補助金は、採択後すぐにもらえるものであるとの誤解が少なくありません。全体の流れを確認し、資金繰りに注意しておきましょう。
悪質な代行業者に注意する
補助金の申請を自社で行おうとすれば、相当な手間と時間を要してしまいます。そのため、専門家の支援を受けて申請を進めることが多いでしょう。しかし、補助金の代行申請を行う事業者のなかには、悪質な代行業者が混じっている場合もあるようです。
悪質な業者に依頼してしまえば、いわゆる「コピペ」などで粗悪な申請書類を作成されて採択が遠のいてしまうリスクや、法外な報酬を請求されるリスクがあります。そのため、補助金の申請を依頼する際にはあらかじめ評判を確認したり、口頭のみならず契約書などの書面できちんと料金を確認したりすることをおすすめします。
また、中には不正受給をそそのかす業者もあるようです。しかし、新型コロナ禍の給付金をだまし取ったとして逮捕されたニュースでも報じられていたとおり、補助金の不正受給は重大な犯罪です。
たとえ「この程度ならバレないよ」などと業者側からそそのかされたとしても、絶対に手を染めないようにご注意ください。
まとめ
補助金の中には、飲食店で利用できるものが少なくありません。補助金をうまく活用することで、自社での負担を抑えつつ事業への投資をすることが可能となります。
自社で活用できそうな補助金をみつけたら、積極的に申請してみてはいかがでしょうか?